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司法試験不合格のリスクは伴うが、キャリアチェンジを可能にする法科大学院

 法科大学院の修了は司法試験(旧試験は2010年で終了)の受験資格の一つとなっている。2011年から始まった予備試験に合格しても受験資格を得られるが、受験者数による実質合格率は1.8%と超難関。このため、法科大学院経由で目指すのが一般的だ。そして、修了後に司法試験に合格すれば法曹界への道が開かれ、裁判官、検察官、そして弁護士に転身できるため、社会人にとっては確実なキャリアチェンジが可能な大学院といえよう。
  弁護士になれば高収入も期待できるのだが、その一方で修了後に受験する司法試験に最終的に不合格となれば、再就職でリスクが伴う。また、新人弁護士の就職難も問題となっており、必ずしも合格すればバラ色とは限らなくなってきた。社会人はそのリスクとリターンを十分に理解してから挑戦していただきたい。

転機を迎えた法科大学院と司法試験
 3年ほど前から、新人弁護士の就職難が報道されるようになった。いわゆるイソ弁(居候弁護士)として正規就職できる事務所がなく、机や電話だけ置かせてもらうケースもあるという。
 また、日本学生支援機構の奨学金を借りる人も少なくないため、修了後には司法試験の合否を問わず返還していかなければならない。要するに、法科大学院の学費や生活費というおカネと、司法修習後の就職、もっといえば、ますます増加する弁護士にこれまでのような高収入が可能かという様々な問題が噴出してきたのである。

 法科大学院の側も、司法試験合格者数で上位の大学院は東京、中央、京都、慶應義塾、早稲田(2011年度)と常連がほぼ固まりつつある。下位の大学院では、入試倍率が2倍未満で、司法試験合格率が全国平均の半分未満(いずれも3年連続が要件)などであれば、文部科学省からの補助金が減額されるようだ(2012年度から)。
 すでに姫路獨協大学が撤退しており、法科大学院も淘汰の時代に突入しつつあるといっていいだろう。

 司法試験自体も、「2010年度には合格者3000人程度」を目標にしてきたが、前述の新人弁護士就職難を理由に日弁連が「見直し」を提言。それに応えるかのように、昨年度は合格者が2074人、今年度も2063人と2000人台で推移している。

 法科大学院は2004年4月からスタートした新しい大学院であり、司法試験制度も変わったが、僅か7年目で大きな転機を迎えたというほかない。

社会人入学者は減少
 発足当初はブームといっていいほど人気を集めた法科大学院だが、こうした問題を反映して、社会人の入学者は2004年度に2620人だったが、2011年度は668人と大幅に減少している(文部科学省学校基本調査)。

 司法試験までの基本的なプロセスを紹介すると、法科大学院には3年制の法学未修者コースと、2年制の法学既修者コースがある。これを修了後に司法試験を受験するが、何度も可能なわけではなく、「5年で3回」までと制限されている。
 つまり、5年以内に3回までしか受験できない。タイムオーバーまたは3回とも不合格であれば、法科大学院に再入学するか、旧試験終了後の2011年度から新しく実施された予備試験を受けるしかないわけだ。

 となれば合格率が気になるが、初めて未修者が受験した2007年度は40%だったが、次第に厳しくなり、2010年度は25.4%、2011年度は23.5%と難関化しつつある。それでも合格できればいいのだが、仮に最終的に不合格となれば、未修者コースで3年、受験で3年なら6年間のブランクとなってしまう。
 法科大学院修了者には法務博士(専門職)という学位が授与されるが、これを企業がどう評価するかはまだ定まっていない。今のような雇用環境が続くのであれば、この6年間のブランクは再就職する際にやはりハンデになると考えられる。

 だからこそ社会人が敬遠し始めたのである。

それでもハイリターンは期待できる
 ハイリスクな側面ばかりを紹介してきたが、あくまでも司法試験の合格が前提だが、リターンも決して少なくはない。

 まず、裁判官や検察官という法曹系国家公務員に転職できる。最近は司法修習を終えた人の1割弱となっており、成績が良くなければ無理だが、勉強を頑張れば不可能でない。検察官になれれば、退職後に弁護士になって独立開業するルートもある。

 弁護士にしても、優秀な成績であれば、法廷ではなく企業法務を専門とする大手ローファームに就職でき、当初から高収入も期待できるはずだ。

 法科大学院への入学も、実は社会人や他学部出身者を一定割合受け入れることが大学院の努力義務となっており、社会人入学者が激減した今なら逆にチャンスといってもいいのではないだろうか。合格者数で上位の法科大学院は入学倍率も必然的に高くなるが、社会人なら一般学生よりも可能性は高いと思われる。

入学段階から司法試験合格を目指す
 この法科大学院に入学するためには、事前に適性試験を受けることから始まる。平成23年度以降は試験方法が変わり、法科大学院協会、日弁連法務研究財団、商事法務研究会の3者により適性試験管理委員会を組織し、年2回実施することになった。
 3年制の法学未修者コースの場合、筆記試験はこの適性試験だけ。志望理由書(パーソナル・ステートメント)など所定の書類審査を経て、小論文、それに面接で入学選抜は終了する。適性試験はいささか慣れが必要な問題が出るので、準備はしておくべきだが、その後は小論文程度。社会人にとって受験負担が少なく、ダメモトで挑戦したい入学審査といえよう。
 2年制の既修者コースに関しては、法律科目の筆記試験が加わる。このコースは必ずしも法学部出身者に限定しているわけではないが、高得点を取るためには、それなりの受験勉強が必要になってくる(詳細は法科大学院によって異なる)。

 この法科大学院を修了すれば、前述したように「法務博士(専門職)」という学位が授与されるのだが、司法試験に合格しなければ法曹界へのキャリアチェンジはできない。このため、1年次から司法試験に照準を絞った受験勉強を行うことがポイントになってくる。2011年度の結果でも、1回目の合格者が55.3%に対して、2回目の受験者は28.6%、3回目は16.1%。何度も受けるほど合格率は落ちていくと考えていただきたい。

 法科大学院の教育も大切だが、不合格なら人生に大きく影響するので、専門の受験指導スクールを利用するなど、とにかく合格を目指してほしい。

夜間通学できる法科大学院もある
 こうしたリスクを少しでも軽減したいという社会人には、数は少ないが夜間に通学できる法科大学院もある。会社をやめず、学生専業にならなくても司法試験を目指せるのは、北海学園大学、筑波大学、成蹊大学、大東文化大学、桐蔭横浜大学、大宮法科大学院、名城大学、大阪学院大学。このうち大宮法科大学院は2012年から桐蔭横浜大学の法科大学院に統合されることになったので、7大学院ということになる。
 そのうち4大学院は首都圏にあるので「地方で夜間」は限られてくるが、東京在住であればいくつか選択肢があるわけだ。

 もっとも、夜間と土・日の勉強では司法試験の合格は困難という意見もある。実際に1日に17時間も勉強したという合格者の声もあるので、メドが見えてきたら思いきって学生専業になるという覚悟が必要かもしれない。

 否定的な話から始めてしまったが、合格率3%の旧試験では5年や10年の「司法浪人」は珍しくなかった。それに比べれば、今は23.5%で合格のチャンスは少なくない。
 かつては法律家を志望していた人や、どうにも今の仕事や会社に適性が感じられないといった人たちにとっては、確実に人生を変えられる有力なキャリアチェンジ・ルートといえるだろう。

ニュースソース:朝日新聞デジタル

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