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もめない!損しない!遺言書の正しい書き方

 遺言書でのトラブルは、その書式に問題がある場合と、内容に起因するものとの2つに分けられます。

 まず、一般に遺言書は、自分で書く「自筆証書」と、公証役場で公証人に作成してもらう「公正証書」の2種類があり(表参照)、トラブルになるのは圧倒的に前者の割合が高い。具体的なリスクを列挙すると、

(1)捺印や日付の不備など、形式的なミスで遺言書が無効になる
(2)本人の筆跡を証明できない
(3)遺言書を見つけられない、または、他者に破棄される
(4)偽造、あるいは、本人の本意で書かれたかを疑われる

 などです。遺言書は形式上、1点でも不備があると有効な遺言と認められないため、例えば「夫婦連名で署名」「パソコンで作成」した場合なども無効となってしまいます。また近年では自筆で書く機会が激減していることから、本人の筆跡を証明できるものが残っておらず、争いに発展する事例も生じています。

 さらに、遺言書を隠しすぎて発見されない、または、あることも知られずに処分されてしまう、もしくは、誰かに破棄されてしまうと、“なかった”のと同じことに。人に預ける場合も、本人が遺言書を託せる“信頼できる人”=“最も多く相続させたい相続人”であることが多く、後に他の相続人から偽造を疑われたり、「痴呆で判断能力のない親を騙して書かせた」などと非難され、裁判沙汰になるケースも少なくありません。

 こうしたリスクを避けるためにも公正証書が確実ですが、着手するハードルの低さから、自筆証書に根強い人気があるのも事実。作成の際は前述のリスクを念頭に置いたうえで、次のポイントを参考に。

 ●書き方のポイント

【1】全文を自筆で書くこと。パソコンやワープロ書きの遺言書は法的に無効。
【2】「遺言書」と明記。誤って「遺書」と書かないこと。
【3】不動産は登記簿謄本の通りに記載する。
【4】特定できるように、銀行名、支店名、口座番号を記載。インターネットの銀行、証券口座も忘れずに。
【5】指定以外の財産についても分け方を明記する。「記載以外の〜」と記すことで、残りすべての資産をカバーできる。
【6】どうしてこのような遺言になったのか、理由を記すと遺族の納得を得やすい。
【7】正確な日付を書く。「8月吉日」などはNG。
【8】遺言書は1人1通が原則。連名で作成すると無効に。
【9】捺印は実印、または本人が普段使用している認印で。拇印は安全とはいえず、裁判で争われるケースも。

■分け方に差がある場合、必ずその理由を! 

 内容面での主だったトラブルには、

(1)遺産目録が不正確
(2)一部の財産と相続人のみ記述(全財産の分け方が不明)
(3)相続人の間で分け方に差がある
(4)遺留分(特定の相続人に最低限保証される一定割合の遺産)を無視した遺言

 が挙げられます。

 まず、(1)では、本人名義の預貯金が網羅されておらず、後から5月雨式に見つかって混乱を来すケース。昨今、増えているのがインターネットでの銀行や証券口座の存在です。従来型の金融機関と違って郵便物がほとんど来ないため、口座がある事実を本人以外が把握していないことが多く、死後に他者が全部を探し出すのは至難の業に。すべてを網羅した遺産目録の付記が必要です。

 次に、「自宅は長男へ」「(メーンバンクの)△△銀行の預金は次男に」など、一部の資産だけしか記述がなく、その他の財産を誰にどう分けるのか触れていないパターン。記載のない遺産については、遺産分割協議書が必要となり、結局、遺言書がないのと同じ状態になってしまいます。とても全部を書き切れない場合には、目ぼしい財産だけをどう分けるか記し、「残りの遺産は法定相続分に従って分ける」といった記述のみでも可。最も危険なのは、「後は皆で相談して分けろ」とすることで、話し合いの過程で、ほぼ必ず争いを招いてしまいます。

 (3)は遺族間の仲違いの元。「長女には療養中に面倒をかけた」「次男には留学費用を出した」など、どんな根拠で子供たちの間に差をつけたのか、どうしてその子の相続分が多い(少ない)のか、明確な理由を付言事項として残すこと。

 とはいえ、法律で定められた「遺留分」を無視した内容だと、権利を侵害された相続人によって、裁判に持ち込まれる可能性も。遺留分を無視した遺言は極力避けるのが大原則です。

 預貯金、売って現金に換えられる不動産や金融商品の場合、数字上での分配が容易なため、遺産分割は比較的スムーズです。問題になるのは総じて“割れない財産”で、目ぼしい相続財産が自宅の土地建物しかなく、かつ、子供の1人が住んでいるケースなどは、その代表例。揉めることが予想できる家族こそ、生前の話し合いと有効な遺言書が必要です。

親に書いてもらうなら「いつ書いたか」が重要

 親に遺言書を書いてもらう際は、「いつ書いてもらうか」も大きなポイントです。痴呆や病気など先に何があるかわからず、また高齢になるほど死や健康被害が現実的なものとなり、子供の側から「書いてくれ」とは言い出しにくくなります。加えて、健康状態が良好でも、当人の年齢が上がるにつれ、他の相続人から「作成時には痴呆状態だった」などと異論を唱えられるリスクも高まるため、1日でも早く、健常なうちに書いてもらうべきでしょう。「縁起でもない! 」と激高される向きもありますが、不思議なことに、1度作ってしまうと「気が楽になった」と、安堵する人がほとんどです。

 ちなみに、遺言書の作成時に病気を患っていたり、医師の診察を受けている場合には、その時点での診断書やカルテのコピーを取得しておくと後の面倒を回避できます。

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弁護士
星 千絵
田辺総合法律事務所所属。案件に応じた親身な対応と明快な法律解説に定評あり。著書に『生活と環境をめぐる法律相談Q&A』など。
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ニュースソース:プレジデント

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